「内装工事の相談をしたら、『この店舗は内装制限の対象になります』と言われた」 「不燃材料や準不燃材料という言葉が出てきたけれど、普通の材料と何が違うのか分からない」
店舗の内装工事を検討していると、こうした場面に出会うことがあります。内装制限は建築基準法で定められたルールで、対象になるかどうかは店舗の用途や床面積、建物の構造によって変わります。
この記事では、建築基準法・建築基準法施行令の条文をもとに、内装制限の対象になる条件と、求められる内装材料の基本を整理しました。

内装制限とは何か
内装制限は、建築基準法第35条の2で定められている規定です。条文では、一定の建築物について「壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを防火上支障がないようにしなければならない」としています。
火災が発生したとき、燃えやすい材料で仕上げられた壁や天井は、炎や煙が広がる速さに直結します。内装制限は、火災の初期段階で内装材料から出る炎や煙を抑え、避難の時間を確保するために設けられているルールです。
対象になる建築物の大枠は法律本体(第35条の2)に書かれていますが、具体的にどんな用途・規模の建築物が対象になるか、どんな材料を使えばよいかは、建築基準法施行令(政令)に委任されています。
どんな店舗が内装制限の対象になるか
店舗・飲食店は「特殊建築物」の用途に含まれる
建築基準法には、防火上の規制が強くかかる「特殊建築物」という考え方があります。この用途の分類は法律の別表第一(い)欄にまとめられており、(四)項には次のような用途が挙げられています。
> 百貨店、マーケット、展示場、キャバレー、カフェー、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、遊技場その他これらに類するもので政令で定めるもの
そして、建築基準法施行令第115条の3では、この(四)項に「類するもの」として、次の用途が定められています。
> 公衆浴場、待合、料理店、飲食店又は物品販売業を営む店舗(床面積が十平方メートル以内のものを除く)
つまり、床面積10平方メートルを超える一般的な店舗や飲食店は、この(四)項の用途に該当します。「百貨店」のような大型店に限った話ではなく、小規模な店舗や飲食店も対象になり得るということです。
内装制限がかかるかどうかは、床面積と建物の構造で決まる
(四)項の用途に該当するからといって、すべての店舗が内装制限の対象になるわけではありません。建築基準法施行令第128条の4では、建築物の構造(耐火建築物かどうかなど)と、店舗部分がある階に応じて、対象になる床面積の基準が次のように定められています。
| 建築物の構造 | 対象になる条件 |
|---|---|
| 耐火建築物等(特定主要構造部を耐火構造とし、1時間準耐火基準に適合するもの) | 3階以上の部分で、店舗用途に供する床面積の合計が1,000平方メートル以上 |
| 1時間準耐火基準に適合しない準耐火建築物等 | 2階の部分で、店舗用途に供する床面積の合計が500平方メートル以上 |
| その他の建築物(木造など) | 店舗用途に供する床面積の合計が200平方メートル以上 |
木造の建物に小規模な店舗を構える場合でも、床面積の合計が200平方メートルを超えると内装制限の対象になる可能性がある、という点は押さえておきたいポイントです。
床面積の基準を満たさなくても対象になるケース
床面積の基準とは別に、次のような建築物・部分は、用途を問わず内装制限の対象になります(建築基準法施行令第128条の3の2、第128条の4第2項〜第4項)。
- 大規模な建築物:階数3以上で延べ面積500平方メートル超、階数2で延べ面積1,000平方メートル超、階数1で延べ面積3,000平方メートル超の建築物(学校等を除く)
- 火を使う設備がある室:かまど、こんろ、ストーブ、炉、ボイラーなど火を使う設備・器具を設けた調理室、浴室、乾燥室、ボイラー室、作業室など(住宅の場合は最上階以外の階にあるもの、住宅以外の建築物の場合は原則すべて)
- 無窓居室:床面積50平方メートルを超え、採光・排煙に有効な開口部の面積が床面積の50分の1未満などの条件に該当する居室
飲食店の厨房は、まさに「火を使う設備がある室」に当たります。店舗全体の床面積が内装制限の基準に満たない場合でも、厨房部分だけは内装制限の対象になることがある、という点に注意が必要です。
求められる内装材料の基本
不燃材料・準不燃材料・難燃材料の違い
内装制限で使われる材料は、燃えにくさの程度に応じて3段階に分かれています(建築基準法第2条第9号、建築基準法施行令第1条第5号・第6号)。
| 材料の区分 | 求められる性能の目安 |
|---|---|
| 不燃材料 | 通常の火災による火熱で燃焼しないことなど、国が定める基準に適合するもの |
| 準不燃材料 | 不燃材料と同様の基準を、加熱開始後10分間満たすもの |
| 難燃材料 | 不燃材料と同様の基準を、加熱開始後5分間満たすもの |
いずれも、国土交通大臣が定めた材料を使うか、個別に大臣認定を受けた材料を使う必要があります。「見た目が燃えにくそうだから」「メーカーが『防炎』とうたっているから」といった理由だけで、不燃材料・準不燃材料・難燃材料に該当すると判断することはできません。使用する材料がどの区分に当たるかは、工事を依頼する設計者・施工者に確認することをおすすめします。
居室と通路で、求められる材料が違う
建築基準法施行令第128条の5では、内装制限がかかる部分ごとに、使うべき材料の区分が定められています。
| 部分 | 求められる材料 |
|---|---|
| 店舗の売場・客席などの居室(壁・天井) | 難燃材料(ただし、3階以上の階に居室がある建築物では、その居室の天井は準不燃材料) |
| 居室から地上に通じる廊下・階段などの通路(壁・天井) | 準不燃材料 |
| 火を使う設備がある調理室・浴室など(壁・天井) | 準不燃材料 |
廊下や階段は避難経路になるため、客席や売場よりも一段厳しい「準不燃材料」が求められています。また、階数3以上で延べ面積500平方メートル超などの大規模な建築物では、居室についても難燃材料が必要になるなど、建物の規模によって基準が上乗せされる場合があります。
住宅の火気使用室には、別の緩和措置がある
ここまで紹介した内装制限は、店舗・飲食店など「特殊建築物」を中心にしたルールです。これとは別に、一戸建て住宅のこんろ・固定式ストーブなど火気使用室については、国土交通省告示(平成21年国土交通省告示第225号)で、火気使用設備の周辺だけ内装を強化すれば、それ以外の部分は木材などの使用を認める緩和措置が設けられています。
この緩和措置は一戸建て住宅向けの特例であり、店舗の内装制限とは適用される条件が異なります。店舗の内装工事を検討する際に、住宅向けの緩和措置をそのまま当てはめることはできないため、注意してください。
内装制限に対応するために、工事前にできること
内装制限の対象になるかどうかは、店舗の用途・床面積・建物の構造・階数の組み合わせで決まるため、個別の判断には専門的な確認が必要です。工事を依頼する前の段階でできることとして、次のような点が挙げられます。
- 入居予定の物件(または所有する建物)が、内装制限の対象になる条件(用途・床面積・構造・階数)に当てはまりそうか、設計者や施工者に早めに確認する
- 厨房など火を使う設備を設ける部分がある場合、店舗全体の床面積にかかわらず、その部分の内装材料について確認する
- 使用予定の内装材料が、不燃材料・準不燃材料・難燃材料のどの区分に該当するかを、工事を依頼する設計者・施工者に確認する
- 最終的な適合可否の判断は、所轄の建築主事や指定確認検査機関、建築士に確認する
内装制限への対応は、使用できる材料や仕上げの範囲に関わるため、見積りの内容にも影響します。内装工事全体の流れや見積書の確認ポイントについては、別の記事でも詳しく紹介しています。
よくある疑問
Q. 自分の店舗が内装制限の対象になるかどうかは、どこで確認できますか? A. 用途・床面積・建物の構造・階数の組み合わせで判断が変わるため、この記事だけで個別の店舗の該当・非該当を断定することはできません。工事を依頼する設計者・施工者に確認するか、所轄の建築主事・指定確認検査機関に相談することをおすすめします。
Q. 内装制限の対象になると、工事費用は高くなりますか? A. 不燃材料・準不燃材料・難燃材料は、一般的な内装材料と比べて価格が異なる場合があります。具体的な費用への影響は物件や工事内容によって異なるため、見積りの段階で、内装制限への対応が必要かどうか、それが費用にどう反映されているかを確認するとよいでしょう。
Q. 居抜き物件(前のテナントの内装が残った状態の物件)を使う場合、内装制限は関係ありませんか? A. 居抜き物件であっても、新たにその店舗を使用する際には、内装が現行の基準に適合しているかを確認する必要があります。前のテナントの時点で基準を満たしていたとしても、用途や床面積の変更によって扱いが変わる場合があるため、契約前に確認しておくと安心です。
まとめ
- 内装制限は建築基準法第35条の2にもとづく規定で、火災時の延焼・煙の広がりを抑え、避難の時間を確保するためのルール
- 床面積10平方メートルを超える店舗・飲食店は、建築基準法上の「特殊建築物」の用途((四)項)に含まれる
- 対象になるかどうかは、建築物の構造と店舗部分の床面積の組み合わせで決まる(例:その他の建築物では床面積200平方メートル以上が対象)
- 床面積の基準を満たさなくても、火を使う調理室や大規模な建築物などは内装制限の対象になることがある
- 求められる内装材料は不燃材料・準不燃材料・難燃材料の3段階で、居室より廊下・階段の方が厳しい基準が求められる
- 個別の店舗が対象になるかどうかの最終判断は、設計者・施工者や所轄の建築主事などに確認する
当社(NACOSE)では、内装工事の代理店業務を行っています。内装制限への対応を含め、工事を依頼する前の段階からご相談いただけますので、お気軽にお問い合わせください。


