「店舗の内装工事をお願いしたいけれど、何から進めればいいのか分からない」 「見積もりをもらっても、内容が適正かどうか判断できない」
初めて店舗の内装工事を依頼するとき、こう感じる方は多いと思います。賃貸物件(テナント)での工事には独特の注意点もありますし、建物の用途や規模によっては法令上の手続きが関わることもあります。
この記事では、内装工事を依頼する前に知っておきたい基本的な流れと、契約前に確認しておきたい注意点を整理しました。

内装工事の基本的な流れ
内装工事は、おおむね次のような順番で進みます。
1. 現地調査:施工会社の担当者が物件を訪れ、既存の状態や寸法を確認する 2. 要望整理・プラン作成:「どんな店舗にしたいか」を伝え、基本的なプラン・デザインをまとめてもらう 3. 見積もり取得:プランをもとに見積もりを作成してもらう 4. 契約:見積もり内容・工期などを確認したうえで契約する 5. 着工:工事が始まる 6. 完了確認:仕上がりを確認し、引き渡しを受ける
(参考:中小企業基盤整備機構「J-Net21」起業マニュアル、マネーフォワード クラウド「内装工事の見積もり」解説)
店舗の場合、要望を伝える際に「こういう雰囲気にしたい」という言葉だけでなく、写真や色見本などのイメージ資料を用意しておくと、施工会社に要望が伝わりやすくなります。
見積もりで確認しておきたいポイント
内装工事の見積もりは、「仮設工事」「解体工事」「軽鉄・ボード工事」「内装仕上げ工事」「設備工事」など、いくつかの項目に分かれているのが一般的です。比較・判断のために、次の点を確認しておくと安心です。
- 「一式」だけで済まされていないか:数量や単価の内訳が分かる見積もりのほうが、何にいくらかかっているかを比較しやすくなります
- 解体の範囲:どこからどこまでを解体するのかが明確になっているか
- 仕上げ材の仕様:メーカー名・型番まで記載されているか(記載がないと、安価な代替品に変わってしまうこともあります)
- 古い物件特有の注意:築年数が古い物件では、解体時にアスベストの有無によって費用が変わることがあります
金額の大小だけで判断せず、内訳を見て納得できるかどうかで比較することをおすすめします。
賃貸物件(テナント)で内装工事をする場合の注意点
自分の持ち物件ではなく、賃貸(テナント)で店舗を借りて内装工事をする場合は、契約書の内容確認が特に重要になります。
- 契約書の特約を確認する:内装工事に関する禁止事項、工事前の事前承諾が必要かどうか、退去時の原状回復の範囲・費用負担について、契約書に特約がないかを確認します
- 事前承諾を得てから着工する:貸主(オーナー)に無断で内装工事を進めてしまうと、トラブルの原因になりやすいといわれています
- 工事前後の状態を記録しておく:着工前の状態を写真や図面で残しておくと、退去時の原状回復をめぐるトラブルを防ぎやすくなります
なお、国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、主に住宅(居住用の賃貸)を対象にしたものです。店舗(事業用の賃貸)の原状回復は、このガイドラインがそのまま適用されるわけではなく、契約書の特約内容が優先されるケースが多いとされています。退去時の費用負担について疑問がある場合は、契約書の内容をもとに貸主へ確認することをおすすめします。
法令・手続き面で確認しておきたいこと
店舗の内装工事では、建物の用途や規模によって、建築基準法や消防法令(火災予防条例)に関わる手続きが必要になることがあります。いずれも個別の建物ごとに判断が分かれるため、ここでは制度の大まかな枠組みを紹介します。実際の要否は、必ず物件を管轄する自治体の建築指導担当課や、所轄の消防署予防課に確認してください。
建築基準法:用途変更の確認申請
建築基準法では、建物の用途を変える場合に、建築確認申請の規定が準用されることがあります(同法第87条)。2019年の法改正で、確認申請が必要になる床面積の基準が「100平方メートル超」から「200平方メートル超」に引き上げられました。
そのため、現在の基本的な扱いとしては、
- 用途変更後の部分が、劇場・飲食店・物販店舗など建築基準法上の「特殊建築物」に該当し、
- かつ変更する部分の床面積の合計が200平方メートルを超える場合
に確認申請が必要とされています。事務所や美容室など特殊建築物に当たらない用途への変更であれば、申請が不要とされているケースもあります。防火地域・準防火地域内では、床面積に関わらず対象になるとする自治体案内もあります。
注意したいのは、確認申請が不要な規模・用途であっても、建築基準法の技術的な基準(内装制限・避難規定など)に適合させる義務はなくならないという点です。実際に、申請不要な内装改修で壁や天井を燃えやすい材料に変更してしまった違反例や、天井の改修時に誤って非常用照明を撤去してしまった例が、自治体の注意喚起資料で紹介されています。
消防法令:防火対象物使用開始届など
店舗として使用を開始する際には、「防火対象物使用開始届」の提出が必要になる場合があります。これは消防法そのものではなく、各市区町村が定める火災予防条例にもとづく届出のため、名称・提出期限・必要書類は自治体によって異なります。使用開始のおおむね1週間程度前までに届け出るよう定めている自治体が多いようです。
届出の義務者は、内装工事を行う施工業者ではなく、店舗を使用する関係者(所有者・管理者・入居するテナント側)とされています。また、スプリンクラーや自動火災報知設備などの消防用設備等を設置する工事については、別途「工事整備対象設備等着工届出書」などの届出が必要になる自治体もあります。
届出をしないまま内装工事を終えてしまうと、工事がすべて完了したあとや営業開始後になって、消防用設備の追加工事が必要になってしまうこともあるといわれています。着工前の早い段階で、所轄の消防署予防課に確認しておくと安心です。
良い内装業者を選ぶポイント
内装業者を選ぶときは、次のような点もあわせて確認しておくと、工事後のトラブルを減らしやすくなります。
- 見積もりの分かりやすさ:内訳が明確で、追加費用が発生する条件も事前に説明してくれるか
- 法令対応の説明があるか:用途変更や届出が必要になりそうな場合に、その旨をきちんと説明してくれるか
- 実績:依頼したい業種・規模に近い店舗の施工実績があるか
- 工期・アフター対応:工期の見通しが明確か、工事後の不具合対応についても説明があるか
料金の安さだけで選ぶと、仕様が曖昧なまま進んでしまうこともあります。内訳や説明の丁寧さを見て、納得できる業者を選ぶことをおすすめします。
まとめ
- 内装工事は「現地調査→要望整理→見積もり→契約→着工→完了確認」の流れで進むのが一般的
- 見積もりは「一式」だけでなく、内訳(解体範囲・仕上げ材の仕様など)まで確認する
- 賃貸物件(テナント)では、契約書の特約・事前承諾・原状回復の範囲を着工前に確認しておく
- 建物の用途・規模によっては、建築基準法の用途変更に関する確認申請や、消防法令にもとづく届出が必要になることがある。要否は必ず自治体・消防署に確認する
- 業者選びは、見積もりの分かりやすさや法令対応の説明があるかどうかも判断材料にする
当社(NACOSE)でも、内装工事の代理店業務を行っています。何を確認すればいいか分からない段階からでも、お話をうかがいながら進め方を整理できますので、お気軽にご相談ください。
